こころの軌跡〜天使くんの母の気持ち〜 本文へジャンプ
通院生活の始まりから、歩けるようになるまで
結局、検査入院していろいろ調べた結果、特に異常は見つかりませんでした。
では何故、発達がこんなに遅れているの?先生もたぶん頭を抱えているのではないでしょうか。
「とりあえずリハビリを始めてください。」とのことで、え〜、リハビリって、いったい何するの?
こんな小さな子どもがリハビリするの?な〜んにも知らなかった私は、ただただ驚くばかりでした。
私にとって全く未知の世界だったからです。

1歳4ヶ月から3歳になるまで、一人歩きができるようになるまで運動療法を受けました。
リハビリと言っても本人は遊んでいるって感じでしたが・・・
ずりバイをするようになって、お座りができるようになって、つかまり立ちをして、つたい歩きをして、
ハイハイを覚えて(ちょっと変わったスタイルだったけど)・・・ほかの子と比べれば、すっごくゆっくりだけど、
着実に成長を続ける天使くんを見て、この子は絶対歩けるようになる!
ゆっくりだけど、いつか歩ける!そう信じていました。
PTの先生達もいつも前向きでした(当たり前か?)。
前回の訓練の時と比較して、どんな小さなことでも変化を見つけ、「ずいぶんできるようになったね」と励まして
頂いて、どんなに勇気付けられたことか・・・

この間いろいろ考えました。
訓練を終えて、病院からの帰り道、クルマを運転しながら、ふと空しくなったりしました。
いったい私は何をやっているの?なんでこんなことしてるの?私の人生ってなんなの?
考えれば考えるほど、悲しくなってきて、涙ぐんでしまっていたことも何度もありました。
天使くんの寝顔を見ながら、「きみはいったいどうしちゃったの?」って問いかけたりして・・・・
でも答えは出ない。

頭の中ではいつも、何故?どうして?発達遅滞の原因が不明なので、
どうしてもこの疑問は消え去りません。原因がわかったところで、ではどうするのかと言われても、
それはわかりませんが・・・正直な気持ち、原因がわかって欲しい。こんなに発達が遅れているのだから、
絶対何処かに異常があるはずだ・・・でも現代の医学では究明できないレベルの異常なのかなぁ?

学生時代に受けた講義のなかで、当たり前かもしれないけど、それが実はものすごく大変なことなんだと
気付いたことがありました。それは‘自分が五体満足に、何の障害も持たずに生まれてきた’という事実です。
母親のおなかの中で、一個の受精卵が分裂を繰り返し、いろんな器官が形成されていく様々な過程で、
どこかでミスが生じれば、生まれてくることはできないかもしれない。もし生まれてくることができても、
なにか障害を持って生きていくことになるかもしれない・・・・何の障害もなく生まれて来たってことは、
もうそれだけですっごいことなんだなって深く感動したものでした。
天使くんの場合、いったい何処でミスが生じてしまったのだろうか?

やっぱり妊娠期間中に、この子が生まれたら、1歳過ぎたら働こうなんて思っていたのがいけなかったのかな?
「そんなぁ・・・もっとぼくのそばにいて欲しいんだよ。」
天使くんはこんなことを実は考えていたのかもしれないです。不思議なものです。

インターネットを始めて、情報を集め始めました。
私の周囲には同じような経験の持ち主がいませんでした。
今後のことが全く見えてこない、不安でいっぱいでした。
まるで出口の見えない暗〜い長〜いトンネルの中を、天使くんとふたりで手探りで歩いている・・・・
そんな気分でした。
でもネット上で、いろんな障害を持ったお子さんがたくさんいて、親御さん達も頑張っているということを知り、
私も頑張ろうって思えるようになってきました。
そして、ある詩に出会いました。「天国の特別なこども」という詩です。
有名な詩だそうですが、この詩に心が救われたような気がします。
私は神様に選ばれた親なんだ。
私だから、天使くんのことを育てていけるんだ。
私じゃなければダメなんだ。そう思えるようになりました。
天使くんのおかげで、今まで当たり前に思えていたことや気づかなかったことがいろいろ見え始めました。
‘ありがとう’って天使くんに感謝しちゃいます。                              1999年6月記