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虫売りの鳴く音地べたに  下(おろ)しけり

夜業している母さんの大きな手

 鬼城忌(きじょうき)や境涯俳句われに無し

迷子でて輪のゆがみたる盆踊り

みちのくを離れぬ母の草虱(くさじらみ)  

松葉杖少女に山河黄落(こうらく)す

くつわ虫一途に鳴くを買われけり

鬼灯(ほおずき)を鳴らして妻の質通い

螻蛄(けら)鳴くや今宵の母の針仕事

父の肩にざくろもぎし日よ  戦さ(いくさ)あるな

夜学子の中の一人の松葉杖 

銀座から富士山見えて天高し